退職。そこに立ちはだかる壁
退職する事が出来ない
社長と話をする事で、自分はとんでもない会社に就職していたんだと気づく。
事故で壊したトラックは一発廃車。
損害は4000万。
保険には入っているものの、免責分は自己負担になる。
その金額は400万。
辞めるんだったら、耳揃えて払え!
と社長に言われ、退職を断念するはめに···
今の時代なら、ブラック企業がどうとかで、こんな会社は叩かれるんだろうけど、昔は当たり前だった。
休みもなく、次の残業は100時間どころじゃない。
100時間なら、今月は暇だったなという時代。
そんな企業がゴロゴロあった。
俺は辞める事が出来ず、トラックに乗り続けた。
免責分を天引きされて、給料は手取り三万。
そこから、生活費を捻出しなければならない。
到底、足りるはずもなく借金を重ね、気付いた時には取り返しのつかない金額に。
「せっかく、あの事故から生き延びたのに、会社に殺されるのか···」
もう、どうにもならなかった。
生きて行くために、どうすればいいのか。
死を選ぶのか···
俺の下した決断は、生きる事だった。
誰もいない会社の車庫。
会社の貸与品をトラックに返し、俺は会社から逃げた。
借金まみれでも、生きていればなんとかなる!
これが、俺の生きて行くための決断だった。